「リサイクルは万能ではない」
プラスチックごみの発生はどのように理解すればいいでしょうか。
この問題を約20年にわたり研究している東京農工大の高田秀重教授に聞きました。
――プラスチックごみはどうして海に流れ出すのでしょうか。
「たとえばペットボトルなら街での置き忘れやポイ捨て、ゴミ箱に入った後の動物のいたずらで散乱するケースがある。
こうしたプラスチックが雨で洗われ川に入れば、やがて海に流れ込む。
ペットボトル以外にも、化学繊維が洗濯くずとして河川に入り込むケースもある。
私たちの研究では、人口50万人の都市なら1日で約10億個のマイクロプラスチックが下水処理場から河川に流れ込んでいる」
――プラスチックのリサイクルは不十分なのでしょうか。
「たとえばペットボトルなら8割以上がリサイクルされているが、リサイクルされないごみの一部は確実に川に流れ込んでいる。
缶や瓶がペットボトルに置き換えられ、ここ数十年で日本人が使う量は増大した。
川に流れ込むのが一部とはいっても膨大な量だ。
私たちの調査では東京の荒川流域、富山湾、仙台湾の海岸など日本全国の水域にプラごみがたまっていることを確認した」
「リサイクルは万能ではない。
例えばリサイクルしたプラスチックからできた園芸用品が野外で使われれば、やがて削れて雨に流され、マイクロプラスチックとなる。
プラスチックごみの量を減らすことが一番大切だ」
――マイクロプラスチックは人体にも影響がありますか。
「マイクロプラスチックそのものは人に影響はない。
魚介類の内臓を食べたことで我々の体に入ったとしても、やがて排せつするからだ。
ただし酸化防止などに使われるプラスチックへの添加物や、プラごみに付着した有害物質の人体への影響を懸念している。
現状では人の摂取量が大きくないので影響はないだろうが、量が増えれば問題になる可能性がある。
野生生物を使った実験で影響を確かめていくが、予防的な観点からは今すぐ手を打つべきだ」
――どのような対策が考えられますか。
「プラごみの量を減らすため、個人にできることは多い。
マイバッグを持ち歩き、スーパーやコンビニでレジ袋をもらわない。
飲み物は水筒に入れ、ペットボトル製品を買わない。
水筒に水を入れるための給水器を設置する、などだ。
プラスチックを全部なくすというのではなく、過剰に使っているものを減らしていく努力をすればよい。
あとは河岸や海岸に落ちているごみを拾うことだろう。こうした個人の活動が広がるだけでも、かなりのごみを減らせると思う」