人口増加は1700年頃から
地中海沿岸の素晴らしい景色と気候は、私たちを魅了する。オリーブの木が並ぶゴツゴツとした岩と砂の大地。
夏は暑いけれどカラッとし、冬は温暖。ホメロスがたたえた海の色はブルーグリーン。
樹林は少なく、大地は大きく浸食されている。
実はこの気候と地形は人類が図らずも生み出したもの。
5000年近く前に書かれた古代オリエントの王の冒険物語『ギルガメシュ叙事詩』で、王は現在のレバノンにある緑豊かな杉の樹林を手に入れようとする(かつてのレバノンは「杉の国」だった)。
しかし地中海沿岸の人口が少しずつ増加して土地が開拓されると、気候が変化して乾燥するようになり、古代の物語とは全く異なる景色になった。
同じくイギリスの清教徒たちが初めて北米大陸に上陸した1620年、アメリカの大地は東海岸から2000キロ先のミシシッピ川までびっしりと森に覆われていた。
しかし入植者たちが木を切り倒したため、20世紀にはだだっ広い平原と化していた。
地中海沿岸とアメリカがたどった道は多くの面において、近代における人口爆発の避けられない結果だ。
2000年前の地中海の人口は4000万人だったが、今では4億3000万人。アメリカの人口は、白人の入植以前は数百万人程度だったが、今は3億2400万人もいる。
地球は悲鳴を上げている。
私たちはエネルギーや水の消費などによって地球の資源に負担を掛け続け、ついに人間の生活を支えてくれるこの星の能力の限界を超えてしまった。
世界の人口は毎年8300万人も増えている。
西暦1世紀頃の世界人口は、2億人程度で安定していた。
それが18世紀には6億8000万人まで増えた。
当時は早死にする人が多かったので、一家族の人数は多かった。
農作業をしたり、老人の世話をしたりするのに大家族である必要があったし、そもそも「家族計画」という考え方は存在しなかった
大半の人々が必要最低限の生活を送り、しばしば飢饉に見舞われていた。
しかし18世紀には医療が進歩し、農業の生産性が向上したため、人口の増加に勢いがついた。
1800年には10億人、1987年には50億人、2011年には70億人の大台を超えた。
「金持ちはさらに金持ちになり、貧乏人は子だくさん」とよく言われる。
これは正しい。ヨーロッパ、北アメリカ、オーストラリア、日本(そして現在の中国)といった豊かな国はおしなべて出生率が下がり、遠からず人口減少という事態が待ち受けている。
今後数十年で増加する世界人口の50%以上はアフリカに集中する。
また全世界の人口増加分の50%以上はインド、ナイジェリア、コンゴ(旧ザイール)、パキスタン、エチオピア、タンザニア、アメリカ、ウガンダ、インドネシアの9カ国が占める。
唯一の先進国であるアメリカでさえ環境、社会ストレス、経済成長の釣り合いを取ることに苦労するはずだから、ほかの国では社会、経済、政治への負荷はより深刻だろう。