「企業のマーケティング部門は2020年までに、『content、channels、data』という3つのデジタルハブの周辺に集中すべく再編成される?」
謎解きにはデータが、未来予測には手がかりが必要だ。
未来予測をするためには根拠が必要だ。推理小説の犯人探しをするためにはデータが必要なのと同じように、未来予測のためには、具体的な手がかりが欲しい。
いろいろリサーチしてみると、なかなか興味深いデータが見つかった。それらを「手がかり」としてまとめてみる。
手がかり1:2011年NHK国民生活時間調査
- 1週間に2時間以内(1日平均15分以内)しかテレビを視聴しない人の割合は、10代で25%、20代で28%にのぼり、その割合は年々増加傾向にある。
- 一方、30代以上のテレビ視聴時間は増えている。
- テレビを視聴しない人ほど、ネットへの接続時間は長い。
手がかり2:Convergence Consulting Group(トロント)の調査
- 2012年、アメリカのペイTVの視聴解約者数は約108万人。
- 全米にいるペイTV視聴者全体の1.1%が解約をしたと推計される。
- 逆に、Netflixをはじめとするオンラインビデオサービスを利用する人が増加している。
手がかり3:Bryan Wiener(chairman, 360i)の消費活動分析
- 「消費者は、欲しいと思ったものはそれが何であっても、自分が使っているデバイス上からそれを手に入れたいと思っている」
手がかり4:元電通マーケティングディレクター、中央大学大学院教授・田中洋氏の分析
- テレビを視聴しないユーザーが増えて、マス=大衆としてのオーディエンスは消滅し、フラグメント化している。
- メディア概念が変容し、デバイス、コンテンツ、プラットフォームの3つの要素が、それぞれ他の要素を取り入れながら競合しようとしている。
- 個人がメディア化し、自ら発信することで広告媒体としての価値を作りつつある。
4種類の手がかりから「現在」をみてみよう
メディア関連、IT関連の異なったデータを「手がかり」として重ねあわせ、現在を分析してみる。
- メディアの概念が多様化している。テレビをはじめとするマスメディアからの発信力は、IT環境の整備とともに、確実に「One of them」になりつつある。むしろ、マスメディアからの情報が、他のChannelsに流れることで、情報流通プロセスが複雑化し、それぞれのユーザーに情報が届くときには、さまざまな価値がそこに付加されつつある。
- これまでコンテンツは、特定のメディア、デバイスの形式に沿った作り方をされていた。しかし、デバイス・コンテンツ・プラットフォームの3つの要素が、他の要素を取り入れつつ競合している現在、どのデバイスやプラットフォームでも活用できるコンテンツ作りが求められているようになっている。
- かつてペイTVが普及しはじめたとき、「マスメディアを前提としたマーケティングから、ターゲットを絞ったマーケット・インが可能になる」と言われた。そのペイTVから、オンラインのサービスに消費者の興味が移っている現在は、よりターゲットを細分化した「ペルソナマーケティング」が必要な時代になっている。
- 大雑把な顧客セグメントをターゲティングにした広告宣伝から、個々の人物像のペルソナを具体的にイメージしたターゲティングへの広告宣伝の時代が、本格的に到来している。
大胆予測:これが2020年の広告宣伝の姿だ!(当たるも八卦当たらぬも八卦)
2020年、あなたが常に持ち歩くデバイスは、真の意味での情報端末になっているだろう。
あなた自身の興味や関心に合わせた情報が、自動的に取捨選択され、あなたとつながろうとしているはずだ。
そこには、マスメディアから発信される情報も含まれているが、マスメディアは今以上に「ミーメディア」の方向に向かっていくだろう。すでに「マス=大衆」は存在せず、「ミー=個人」の集合体が、かつての「マス」を作っていくことになるからだ。そのような世界では、「ペルソナ化」された情報こそが、生き残っていく。
ここで、元電通マーケティングディレクターで中央大学大学院教授である田中洋氏の、2020年の予測をいくつか紹介しておきたい。
- あらゆるプレイヤーがメディア化し、自ら発信して広告媒体となる。
- コミュニケーション・プラットフォームの競合はより激しくなる。Google 、Facebookのようなプラットフォームだけでなく、流通業や通販業などもコミュニケーション・プラットフォームとして新たな競合がはじまる。
- コンテンツ・プラットフォームの価値がより重要になる。つまり、コンテンツ創造能力が重要になってくる。
どのような未来になるか、それこそ想像でしかないが、少なくとも今以上に有意なコンテンツがマーケティングの中心に置かれていくであろうというのは、明らかだ。
2020年、あなたはどこで何をしていますか?